凪良ゆうという作家
凪良ゆうは、BL小説でキャリアを始め、2017年には初の非BL作品『神さまのビオトープ』を刊行した。2020年に『流浪の月』、2023年に『汝、星のごとく』で本屋大賞を受賞している。このガイドでは一般文芸の主要作品から、最初の一冊と次に読む作品を案内する。
短い会話や、返事の前にできる一拍の空白が胸へ入ってくる。設定だけ追うと強い物語でも、読んで残るのは、誰かと同じ部屋にいるときの息苦しさや、わかってもらえなかった日の沈黙だ。そこが凪良ゆうを続けて読みたくなる理由だと思う。
はじめて読む人へ:最初の一冊
汝、星のごとく(2022年、講談社)
瀬戸内の島で出会った暁海と櫂が、家族、仕事、才能のあいだで何度もすれ違っていく。恋愛小説として入っていけるのに、最後まで行くと恋愛だけでは収まらなくなる。本屋大賞受賞作の中でも手に取りやすく、最初の一冊を一つ選ぶなら、これがいちばん勧めやすい。
家族との関係が重く描かれるため、軽い恋愛物語を求めるときには注意。続編『星を編む』も気になるなら、まずはこちらから読むのがおすすめ。
→ 『汝、星のごとく』の読書前ガイド(感想本文は人物関係や終盤の読後感に触れます)

汝、星のごとく
購入先で版・巻数・紙/電子をご確認ください。
流浪の月(2019年、東京創元社)
誘拐犯と被害者と呼ばれた二人が、十五年後に再会する。こちらも本屋大賞受賞作だが、『汝、星のごとく』よりずっと静かで、読む側に返ってくるものの種類が違う。「事実と真実はちがう」という言葉に掴まれたいなら、こちらから入るのもありだと思う。
事件や周囲からの偏見を扱うので、単純に心が晴れる話ではない。他人から見える関係と、本人たちにとっての関係の違いを考えたい人に向く。
→ 『流浪の月』の読書前ガイド(あらすじに被害の説明、感想本文に終盤の引用があります)

流浪の月
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わたしの美しい庭(2019年、ポプラ社)
マンションの屋上にある縁切り神社と、そこを訪れる人たちを描く物語。血縁のない百音と統理の暮らしを軸に、家族の形や人とのつながりを読む入口になる。
暮らしの場から選びたいときの候補。ただし生きづらさも扱うため、明るい出来事だけが続く作品としては案内しない。ここでは出版社の紹介をもとに作品を案内しており、個別の感想記事は未掲載。
シリーズものの読み方
『汝、星のごとく』から『星を編む』へ
『汝、星のごとく』と、その続編にあたる中編集『星を編む』。続編といっても補足ではなく、前作では見えなかった過去、仕事、未来を別の角度から照らし直す本になっている。前作を読み終えて、登場人物たちの時間をもう少し味わいたいと思った人は、そのまま続けて読むのがいい。
- 汝、星のごとく(2022年、講談社)
- 星を編む(2023年、講談社)— 前作の過去や、その後を描く3編。
『星を編む』は前作の先の時間も扱う。未読なら刊行順に読むことをおすすめする。リンク先は読む前の注意点から確認できるが、あらすじ以降は前作の人物や、その後への言及がある。

汝、星のごとく
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星を編む
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作品名が似ているが別の本なので、購入時はタイトルを確認したい。購入カードには単行本と文庫の書影が混在している。ここでの刊行年は初刊を基準にし、版・形式・価格は各販売先で確認する。
もっと読みたい人へ
神さまのビオトープ(2017年、講談社) —— 死んだ夫の幽霊と暮らし続ける女性が主人公。その生活を奇妙だと思う周囲の目と、本人にとって自然な日常のあいだにあるずれが描かれる。一般文芸の出発点として名前がよく挙がる一冊。
滅びの前のシャングリラ(2020年、中央公論新社) —— 一か月後に地球が滅びるとわかった世界で、生きづらさを抱えた四人が最後の時間を過ごしていく。終末ものの形を取りながら、視線は最後まで一人ひとりの生活や人間関係に向いている。2021年本屋大賞にもノミネートされた。
主要作品一覧(初刊年順)
このガイドで紹介する一般文芸の小説と、作家を知るためのファンブックを整理した。BL作品やアンソロジーなどは掲載対象外で、全著作を網羅する一覧ではない。文庫の発売年とは区別している。
| 年 | タイトル | 出版社 | メモ |
|---|---|---|---|
| 2017 | 神さまのビオトープ | 講談社 | 一般向け作品の起点としてよく挙がる |
| 2019 | 流浪の月 | 東京創元社 | 2020年本屋大賞受賞 |
| 2019 | わたしの美しい庭 | ポプラ社 | 暮らしと人とのつながりから選ぶ一冊 |
| 2020 | 滅びの前のシャングリラ | 中央公論新社 | 2021年本屋大賞ノミネート |
| 2022 | 汝、星のごとく | 講談社 | 2023年本屋大賞受賞 |
| 2023 | 星を編む | 講談社 | 『汝、星のごとく』の続編中編集 |
| 2024 | ニューワールド 凪良ゆうの世界 | 中央公論新社 | ファンブック。対談・インタビュー等と『滅びの前のシャングリラ』のスピンオフ掌編を収録 |
どれから読むか迷ったら
恋愛と家族の長編からなら『汝、星のごとく』、言葉にしにくい関係を味わいたいなら『流浪の月』。暮らしと人とのつながりから選ぶなら『わたしの美しい庭』が候補になる。
気に入ったら、間を空けずにもう一冊続けて読んでみてほしい。『流浪の月』のあとに『汝、星のごとく』を読むと、凪良ゆうが何度も書いているのは、特別な事件そのものではなく、誰かにうまく説明できないまま生きている人の時間だと見えてくる。
この作家は、一冊目を読み終えた後より、二冊目に入ったときのほうが輪郭がはっきりする。何となく「こういうタイプか」というのが2作読むと大まかに掴めるので、さらに気になった人は他の作品含め手を伸ばしていくと良いだろう。
掲載情報について
2026年9月21日に、掲載7冊の初刊年と位置づけ、本屋大賞の受賞年を出版社・賞の公式情報で確認した。『わたしの美しい庭』の新しい紹介は出版社情報に基づく選書案内で、読了した体験の追加ではない。読む順番は、続編の構成を踏まえた当サイトのおすすめ。
作品紹介と書誌の確認元:講談社『汝、星のごとく』、『星を編む』、東京創元社『流浪の月』受賞案内・著者紹介、ポプラ社『わたしの美しい庭』、講談社『神さまのビオトープ』、中央公論新社『滅びの前のシャングリラ』、『ニューワールド 凪良ゆうの世界』内容紹介。受賞年は本屋大賞2020年・2023年の結果も参照した。



